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【リテールメディア活用事例】 サントリー × SalesPlusが深堀りする エリアプロモーションの可能性と課題

2025.05.21

左:サントリー(株)広域営業本部 企画部 部長 東 大介氏
中央:(株)SalesPlus 代表取締役副社長 COO関 晋弥
右:サントリー(株)営業推進本部 家庭用統括部長 内丸 研一郎氏

 サントリー株式会社(以下、サントリー㈱)は、2024年11月に福岡県を対象として『サントリー生ビール(通称:サン生)』の小売横断エリアプロモーションを実施した。九州の小売大手「TRIAL」、「イオン九州」、「にしてつストア」などの県内店舗で対象商品の陳列強化とリテールメディアを展開、同時にご当地タレントを起用したテレビCM、タイアップ番組、店頭イベントなどを組み合わせて売上の伸長を記録した。
本稿では、SalesPlus代表取締役副社長 COO関 晋弥がサントリー㈱ 営業推進本部 家庭用統括部長 内丸氏、同 広域営業本部 企画部 部長 東氏にエリアプロモーションについて話を伺った。

「サン生」福岡プロジェクトの真価とは?

SalesPlus関:
はじめに、今回のプロジェクトを改めて振り返って頂けますか。

サントリー東:
当社としての大きな収穫は、「営業部×マーケティング部門×宣伝部が三位一体で取り組み、成果を上げたこと」です。これまで有りそうで無かった取り組みで、プロジェクトのプランニングから実行、効果検証までを一緒に行ったことは大きな成果であり、大局的な視点でのこの取り組みの真価だと思います。
そして、この取り組みを他のエリアでも展開することでサントリーの売上・シェアを押し上げる可能性があります。

福岡のご当地タレント‟新谷あやか‟さんを起用した店頭ポスター

SalesPlus関:
内丸さんはいかがですか?

サントリー内丸:
私は以前、マーケティング部門に所属していたのですが、マーケティングはブランドターゲットのパーセプション変化を意識して物事を考えます。今回は、そのブランドターゲットに更に「エリア」視点を加えることで成果に
繋がりました。
『エリアプロモーション』という言葉は以前からありますが、『エリア』における取り組み方を真剣に見直す良い機会になりました。

今後の地域に根差す営業活動のあり方のヒントにもなった!

SalesPlus関:
通常は、マーケティング部署が企画したプロモーションが売場で展開されるという流れだと思います。
しかし、今回は、サントリーの営業部門と小売企業の取り組みとして始まり、マーケティング部門と宣伝部門を巻き込んでいくという流れで、営業スタッフの負担が大きかったと思います。実際のところどうだったのでしょうか?

サントリー東:
営業部門としては、マーケティング部門、宣伝部門と一緒に『売上拡大の実績をつくりたい』という想いがあったので、負担というよりは、それを実現できたことで大きな達成感につながりました。
営業スタッフが取り組みを自分事として主体的に動いたことも成果が出た要因のひとつだと思っています。

サントリー内丸:
今回の取り組みには、今後の地域に根差す営業活動のあり方を考えるうえでのヒントもありました。
それは『エリアのことを一番理解しているのは各エリアを担当する営業だ』ということです。
福岡プロジェクトは、企画を立案するにあたり、エリアを担当する営業担当の意見が企画の核になりました。
各エリアの営業担当がエリアプロモーションの考えや視点を持ち、それぞれのエリアに合った施策を行うことができれば相当強い営業活動になると思います。小売企業との関係づくりの視点でも『サントリーはここまで細分化してエリアプロモーションをやってくれる!』と思ってもらえれば関係の深化にもつながります。

今回の食の組合せは『豚バラ×サン生』

エリア特有のインサイトの発見が売上伸長のキーポイント

SalesPlus関:
ありがとうございます。
ここまでは組織体制やスタッフの在り方の視点で福岡プロジェクトを振り返っていただきました。
ここからは売上への効果について語っていただければと思います。

サントリー内丸:
わかりました。
まず、売上向上のためのマーケティング施策として日本全国で展開されるテレビCMや販促施策などがありますが、エリア毎に地域性や課題も異なるため購入の最後の一押しを全国一律の施策のみで行うことは容易ではありません。
今回、福岡県の消費者のインサイトを考察し、マスメディア × リテールメディア × 店頭陳列を一気通貫するコンセプトを設定し実行に移したことで、売上伸長につなげました。
しっかり地域の生活者(または消費者)のインサイトを考察することを起点としたからこそ売上に結びつき、歩留まりも高かったように思います。

Salesplus関:
今回は福岡の消費者の心を動かす『サン生と食の組合せ』というインサイトに注目した訳ですが、内丸さんはそのインサイトに共感する食材の粒度を気にされていましたね。

サントリー内丸:
例えば、『福岡グルメ×サン生』だと訴求の範囲が曖昧になるため刺さらない。かといってニッチになり過ぎても販促効果が得づらい。
『豚バラ×サン生』というテーマだと、福岡の消費者に『福岡のことを分かってるな!』と思ってもらえる、そしてサン生を買いたい気持ちになっていただけると思いました。
ブランドの考え方に『マインドシェアで勝つ』というものがありますが、店頭を含めて消費者が『豚バラといえばサン生』という想起をさせる仕掛けや環境づくりを継続的に行っていくことが重要だと考えています。それが食習慣にまで根ざしてくれれば大成功です。

‟新谷あやか‟さんの来店に合わせて大量陳列された店頭の様子

SalesPlus関:
商品が食文化や食習慣と結びつくと継続的な売上が期待できますね。

『豚バラ×サン生」というテーマが決まると、次は具体的なコンテンツに落とし込んでいく作業になると思います。コンテンツの要素としては大きく分けて『出演者』と『内容』になりますが、まず出演者について教えてください。今回は、福岡出身のタレント新谷あやかさんを起用しました。リテールメディアや店頭イベントでフットワークよく対応をいただけるということ、かつ地元で知名度のあるご当地タレント』という視点で選定しましたが、結果についてはどうお考えでしょうか?

サントリー内丸:
タレント、そして内容に関しても言えることですが、『テレビの役割を明確にさせて、それに基づいて企画することが重要』ということが分かりました。今回の結果で議論になったのがテレビCMの認知効率です。
サン生の場合、全国CMも放送しているため、エリアCMについては、認知効率を追い求める以上に、サイネージやイベントへの活用、あるいは、先ほど東が申し上げたエリアの営業のインナーモチベーションUPといった役割を負わせるべきだ、という学びがありました。
また、テレビ番組の販促効果が顕著でした。内容はご当地タレントが福岡県内の豚バラの名店を巡るというものです。今回、テレビにはCM(認知)と番組(興味喚起)という2つの役割があったのですが、前述のように今後は役割を明確にして改善していくことになると思います。

SalesPlus関:
東さんはどうお考えですか?

サントリー東:
今回、新谷さん(タレント)が精力的に店頭イベントを周り、各小売店で動画撮影も行いました。フットワークの良い対応のおかげで、各小売店にも喜んでいただき営業としては非常に有難かったです。

SalesPlus関:
なるほど。
『タレントを起用して店頭イベントや店頭用動画を小売店に提供することで店頭陳列を促すこと』が今回の施策のポイントのひとつでしたが、その点はいかがでしたか?

サントリー東:
『複層接点』という言葉があるのですが、商品の陳列を強化ができるような大型店の売上は大きく伸長しました。店頭イベントや店頭用動画と連動して売場をつくるという狙いが功を奏したと思います。一方で、売り場面積の小さいコンビニやドラッグストアはそこまで伸びなかったので、その点は今後の課題です。
大量陳列ができない店舗を利用する消費者との複合的な接点をどのように作り、どのようなコンテンツで訴求し、行動変容を促すのかを継続的に考えていく必要があります。
昨今は、各小売企業が独自のリテールメディアやアプリを運用しているので、メーカー側はがそれを活用して消費者との複層接点を作ることもひとつの方向性かもしれません。
いずれにしても、今回のエリアプロモーションの取り組みは、まだ始まったばかりです。トライ&エラーで課題を浮き彫りにして、ノウハウを蓄積していきたいと思います。

今後は、ビール市場全体の拡大を図る想いも!

SalesPlus関:
最後に、今後のエリアプロモーションについてコメントをお願いします。

サントリー内丸:
繰り返しになりますが、各地域の生活者(または消費者)インサイトを見つめることが最も重要だと思います。本社からは各地域の特性が見えづらい部分がありますので、エリアの営業部門が課題を自分事として主体的に動くことが効果の高いエリアプロモーションにつながると思います。
また、若者のアルコール離れや少子化という市場環境の中で、エリアプロモーションによってビールカテゴリー全体が拡大するような取り組みにまで進化できれば、小売企業にとっても大きなメリットがある取り組みになると思います。

SalesPlus関:
本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
SalesPlusとしてもメーカー様と小売企業様の取り組みに益々貢献していきたいと思っています。

 SalesPlusは、各エリアのリテールメディア活用やインサイトを発掘し、エリアごとの小売企業とメーカー様とを繋ぐエリアマーケティングに強みをもっています。
エリアマーケティングをご検討の際は、ぜひ当社にご相談ください。