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データ戦略クリエイティブ 第1回

2025.03.18

SalesPlus代表取締役社長 CEO 大浦芳久

小売店のPOSデータを活用するデータ戦略クリエイティブとは? 第1回「データ戦略クリエイティブのはじまりとその効果」

「データ戦略クリエイティブ」はSalesPlusの持つ特徴的なソリューションのひとつです。
今回から複数回に渡りSalesPlusのCEO大浦がその要点を解説します。

クリエイティブへのデータ活用のはじまり

前職の電通時代に、電通が「データドリブンクリエイティブ」という部門を2010年に新設しました。
背景としては、ネット広告が台頭し、ターゲティング広告やデジタル施策が伸びてきたこと、それに伴い、広告を一律につくっていてはダメだという流れが起きたからです。つまり、ネット広告やデジタル施策に対応するクリエイティブが求められるようになりました。
その時に複数のデータドリブンクリエイティブ部が新設され、その中のひとつの部長に私が就くことになったのです。

私自身、元々データに強い訳ではありませんでしたが、戦略をつくることは好きでした。
広告代理店は長年、マーケティング部門が戦略を立て、それに基づきクリエイティブ部門が表現を考えるという手法を取ってきましたが、それらを融合した方がよいのではないか、という考えは昔からありました。
一般的にクリエイターは、マーケティングは専門部署に任せ「つくること」に専念したい、という人が多い中、私は川上から考えることが好きだったので、そうした役が回ってきたのかなと思います。

「データドリブンクリエイティブ」は、テクニカルな部分も含め、マス広告とネット広告を統合しなければいけませんでした。

ポイントは2つ。
ひとつはアドテクノロジーを活用した「ターゲティング」で、もうひとつは「ターゲットインサイト※(人の気持ちを動かす潜在的な共感ポイントの発見)」です。
「データドリブンクリエイティブ」は、どちらかというと「インサイト」を担うべきと思っていました。

ただ、人によって傾向はあります。
他の部長の中には、アドテク(ターゲティング)が大好きという人もいました。
私は、クリエイターというのは、どちらかというとインサイトの方が好きだと思っていたので意外だったのですが、人によっては「これとこのシステムをつないでこうすれば、こんな風にターゲティングができて、こんな風に効率的に広告を打てます!」というように、デジタル知識を駆使したアドテクに開花した方が何人もいたというのは面白かったですね。

データ分析で顧客のインサイトがわかると、クリエイティブの表現はつくりやすくなります。
データからインサイトの発見が楽しくできた、というのが、私の「データ戦略クリエイティブ」の第一段階です。

リテールメディアメディアとの出会いとPOSデータ活用

その後、2020年頃、小売企業様との関わりができたことにより「リテールDX」という言葉に出会います。
これからの時代は、間違いなくリテールメディアが台頭する、その気付きを得ました。

本来、広告代理店というのは「広告費」を扱うビジネスで、商流は広告宣伝部と代理店間になります。
一方で、世の中のマーケティングコストには、広告費の約2倍といわれる「販促費」があります。この販促費は、メーカーの流通営業部と小売企業間の商流です。

リテールメディアがこれから台頭していくと「広告費」と「販促費」が融合することが予測できました。
私の周りにいた電通の人間は、商流が違うので、販促費の存在を知らない人も多くいました。知らないというか、関係がない、という感じでしょうか。金額にも驚きました。販促費は広告費の倍以上ですから。これを、広告費と融合させることができれば、電通の広告事業も伸びると感じました。

「データドリブンクリエイティブ」をやっていたことで、メディアをミックスさせた方が、遥かに広告効果が上がることを知っていました。

かつて、大手広告代理店のビジネスモデルはマス広告がメインでした。
そこにネット広告が出てきて、クライアントが広告費をそっちに回し始めたため、無視できない存在になりました。
こうした流れを受け、電通もデジタル領域に力を入れ、専門のグループ会社も増やし「マス広告とネット広告を融合させたフルファネルキャンペーンができます!」という営業スタイルに変革していくことになったのです。

実際、ネット広告を適正にミックスさせれば、広告効果は上がりました。
仮に同じ金額で広告する場合でも、リーチ率を優先して、すべての予算をテレビCMの15秒スポットに投下するよりも、総予算は変えずに、何割かをネット広告にアロケーションするほうが、売上も興味関心度も、1.3倍、うまくいけば1.5倍は上がりました。
混ぜ方や商材にもよりますが、下がるということはまずなかったです。

ですので、リテールメディアも同じだと思いました。マスとデジタルをつなげた方が広告効果が伸長したことと同様に、リテールメディアもつなげれば、今よりもさらに1.3倍くらいは伸びると想像できました。
これはやったほうがいいよねと。

ところがまだ、リテールメディアを融合させようと考えるところは少ないです。
一番の理由は商流の違いです。

広告費を扱っている広告宣伝部と、販促費を扱っている流通営業部のお財布が違うからです。伝統的に、広告費と販促費は別に考えられてきました。あと、メディアを持っているところが小売ですので、売場とセットで組み立てようとすると、広告代理店とクライアントと小売の3者で動かなければなりません。これも難しい。そんな商流がなかったからです。広告代理店とメディア会社とクライアントの3者であれば、すでに協業するスキームができていますが、リテールメディアにはまだそれがない。いずれにしても商習慣の問題が一番大きいと思います。

AIであれば、合理性ですぐに判断できそうなことも、人間には色々なしがらみがあって、なかなか変化できない面もありますからね。
ネット広告が「広告費」に含まれるようになったように、リテールメディアも広告費に含まれるようになれば、ずっと広告は進みます。
SalesPlusは、広告代理店とも小売とも結びつきが強いので、すでにいくつかの融合事例を作っています。そこが私たちの強みです。

さて「なぜ、データ戦略クリエイティブなのか?」という話しに戻りましょう。
ネット広告をやるにはデータが必要、そしてデータを活用したら爆発的に伸びた。
リテールメディアも一緒です。データが必要です。
そして、SalesPlusには「小売企業のID-POS」データを扱えるという、圧倒的な強みがあります。ID-POSは小売企業が持つ顧客購買データです。

今回のコラムで、私たちSalesPlusの「データ戦略クリエイティブ」の価値を少しイメージいただけたでしょうか。
次回は、その基礎となる「分析」についてお伝えします。